贈与税とは、個人から財産を受け取ったときにかかる税金です。
保険においても保険料負担者と受取人が異なる場合に保険金や解約返戻金を受け取ると贈与とみなされ贈与税の対象となります。
死亡保険金については、保険料負担者と被保険者(死亡した人)が同一である場合は相続となり相続税の対象となります。
保険料負担者と受取人が異なる場合は贈与税
満期保険金は解約返戻金を保険料負担者と異なる方が受け取る場合には贈与税が課税されます。
保険料負担者 | 被保険者 | 受取人 | 課税 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 妻に贈与税 ※死亡保険金の場合は相続税 |
夫 | 妻 | 妻 | 妻に贈与税 |
夫 | 夫 | 子 | 子に贈与税 ※死亡保険金の場合は相続税 |
夫 | 妻 | 子 | 子に贈与税 |
贈与税の控除額と税率
課税対象金額 = 受取額 - 基礎控除額(110万円)
基礎控除ももちろん保険金にも適用されるので、満期保険金額を110万円に設定しておけば保険金を受け取ったときでも贈与税が課税されることはありません。もし、受け取る保険金額が110万円を超えた場合には、贈与税が課税され、その税率は特例税率と一般税率に分けられます。
特例税率
贈与を受けた場合に次の条件にすべて当てはまっている場合に特例税率での贈与税が課税されます。また、特例税率での税率と控除額は下記表の通りとなります。
- 実祖父母や実父母からの贈与で場合
- 贈与された者の年齢が贈与された年の1月1日時点で20歳以上である場合
課税対象額(贈与額-110万円) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特例税率で贈与税を計算するときは、次の式を用います。
贈与税 = 課税対象額 × 税率 - 控除額
一般税率
特例税率の条件外の場合は一般税率で贈与税が課税されます。一般税率での税率と控除額は下記表の通りです。
課税対象額(贈与額-110万円) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | なし |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
一般税率で贈与税を計算するときも、次の式を用います。
贈与税 = 課税対象額 × 税率 - 控除額
メモ
夫が保険料負担者である満期保険金1,000万円を受け取った場合の課税対象額と税金は次のようになります。
課税対象額 = 1,000万円 - 110万円 = 890万円
税率は一般税率と特例税率に分かれますので、受取人によって税金額が変わってきます。
妻が受取人の場合(一般税率)
贈与税 = 890万円 × 40%(税率)- 125万円(控除額)= 231万円
子(成人)が受取人の場合(特例税率)
贈与税 = 890万円 × 30%(税率)- 90万円(控除額)= 177万円
もし、特例と一般の両方をもらった場合はどうなるんですか?
そちらも試しに計算してみましょう
メモ
夫の兄(叔父)は結婚しておらず、子どももいないため、私たちの子ども(甥)を我が子のようにかわいがってくれており、子どもに対して400万円の贈与がありました。
⇒夫の兄(叔父)から贈与された場合は一般税率となる
また、夫が保険料負担者である満期保険金600万円の受取人を子どもにしていたため、子どもに対して同じ年に合計で1,000万円の贈与となりました。
⇒夫(父)から贈与された場合は特例税率となる
まず、課税対象額は一般、特例に関係なく同じ年に受けた贈与合計額になりますので、次の式の通り基礎控除額を差し引いた890万円となります。
課税対象額 = 890万円 = 400万円(夫の兄分)+ 600万円(夫の満期保険金)- 110万円
夫の兄からの贈与に対する課税額(一般税率)は、課税対象額全体に一般税率をかけて最後に一般税率分の割合分を贈与税とします。
890万円 × 40% - 125万円 = 231万円
夫の兄から受けた贈与は全体である1,000万円のうち400万円であるので400万円/1,000万円分で一般税率割合は2/5となりますので、
231万円 × 2/5 = 92.4万円となります。
夫の満期保険金に対する課税額(特例税率)は、課税対象額全体に特例税率をかけて最後に特例税率分の割合分を贈与税とします。
890万円 × 30% - 90万円 = 177万円
夫の満期保険金として受けた贈与は全体である1,000万円のうち600万円であるので600万円/1,000万円分で一般税率割合は3/5となりますので、
177万円 × 3/5 = 106.2万円となります。
それぞれ、一般税率分92.4万円と特例税率分106.2万円と出ましたので、これらを合計した198.6万円が全体の贈与税額となります。
違う年にそれぞれ贈与すればもう少し課税はやすくなりますよね
一般税:55万円
特例税:90万円
合計145万円となりますので、少しでも同年内での贈与を減らすことで課税額は減らすことができますね
保険に関する贈与税早わかり
- 保険金を受け取る場合でも保険料負担者と受取人が異なる場合には贈与税がかかる
※死亡保険金を除く - 贈与税の基礎控除額は110万円
- 贈与税には一般税率と特例税率がある
保険金にも贈与税がかかる場合がありますが、通常の贈与と同じように110万円の基礎控除がありますので、保険料負担者と受取人が異なる生存保険や生死混同保険に加入の際は、110万円を一つの目安にすると良いかもしれませんね。
また、贈与税の基礎控除を利用しながら相続する際の金額を少なくできれば相続税を大きく減らすことができる可能性もあります。