保険に加入するときに気になるものの一つが保険金額です。
とくに、終身保険や個人年金保険は、定期保険のように「もしかしたらこんなことが起こるかもしれない」というリスク(不確実な出来事)に対して備える掛け捨ての保険と違い、いずれ訪れることがほぼ確実な将来に備えるための保険なので、「将来に向けての貯蓄のつもりで」と検討しているのではないでしょうか。
だとすれば、
- どれくらいの保険金額にしておけば十分だろうか
- 定年後の生活費はどのくらい必要になるのか
- 自分の葬儀代くらいは保険金でまかなえるようにしておこう
と気になるところですが、保険は、長期固定金利となる金融商品ですので、物価がどれだけ変動していても受け取ることができる保険金は契約時に決めた金額となります。
20年、30年後には、同じ500万円でも全く異なる価値になっているかもしれません。
もし、デフレ(物価の下落)の状態にあれば、受け取る保険金の価値は現在よりも大きなものになるかもしれませんが、日本の経済が成長するにはインフレ(物価の上昇)となることが望ましいため、アベノミクスでも「インフレ率を2%にする」といった目標が掲げられています。
インフレが続くと30年後の保険金の価値はこんなに下がる
葬儀費用は、終身保険でまかないたいと考えた場合、葬儀費用の平均は200万円前後ですので、余裕をもって300万円を終身保険で準備したとします。
もし、インフレが続いた場合、実際に保険金を受け取る際のお金の価値は、現在のお金の価値に換算するとどうなるでしょうか。
アベノミクスでは、「インフレ率を2%にする」といった目標が掲げられていますが、実際に2%のインフレが続いたら将来のお金の価値はどうなるのでしょうか。
物価 | 金銭価値 | |
---|---|---|
現在 | ¥300.0万円 | ¥300.0万円 |
5年後 | ¥331.2万円 | ¥271.7万円 |
10年後 | ¥365.7万円 | ¥246.1万円 |
15年後 | ¥403.8万円 | ¥222.9万円 |
20年後 | ¥445.8万円 | ¥201.9万円 |
25年後 | ¥492.2万円 | ¥182.9万円 |
30年後 | ¥543.4万円 | ¥165.6万円 |
35年後 | ¥600.0万円 | ¥150.0万円 |
40年後 | ¥662.4万円 | ¥135.9万円 |
45年後 | ¥731.4万円 | ¥123.1万円 |
50年後 | ¥807.5万円 | ¥111.5万円 |
もしも2%のインフレが続くと30年後のお金の価値は、半分ほどまで落ちてしまいます。
お金の価値の変動ぶりに驚かれたと思いますが、実際に10年、20年とインフレ2%という状態が続くわけではありません。
実際のところ、ここ数年(アベノミクス以降)のインフレ率は平均して0.9%程となっています。
年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
インフレ率 | 0.34% | 2.76% | 0.79% | -0.11% | 0.47% | 1.12% | 0.90% |
0.9%で上昇し続けた場合のお金の価値を現在の価値に換算すると次の表のようになります。
物価 | 金銭価値 | |
---|---|---|
現在 | ¥300.0万円 | ¥300.0万円 |
5年後 | ¥313.7万円 | ¥286.9万円 |
10年後 | ¥328.1万円 | ¥274.3万円 |
15年後 | ¥343.2万円 | ¥262.3万円 |
20年後 | ¥358.9万円 | ¥250.8万円 |
25年後 | ¥375.3万円 | ¥239.8万円 |
30年後 | ¥392.5万円 | ¥229.3万円 |
35年後 | ¥410.5万円 | ¥219.2万円 |
40年後 | ¥429.3万円 | ¥209.6万円 |
45年後 | ¥449.0万円 | ¥200.5万円 |
50年後 | ¥469.5万円 | ¥191.7万円 |
30年後のお金の価値はインフレ率2%のときと違い半分とまではいきませんが、それでも70万円ほど価値が下がることになります。
インフレリスクに強い保険
保険は、長期固定金利となる金融商品ですが、中には保険会社の運用実績にともなって、受け取ることができる保険金が変動するものや予定利率が見直される商品があります。
インフレになると金利が上がり、保険会社が運用している株式や債券の運用実績が向上することが見込まれるため、保険金額が高くなったり、予定利率が高くなることで保険金額が高くなったり、積立部分が大きくなります。
インフレリスクに強いとは言っても100%対応できるわけではありませんし、もしデフレになれば、受けられる恩恵は小さくなりますが、知っておいて損はありません。
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まとめ
終身保険や個人年金保険に支払う保険料は、保険金額に対してどのくらいでしょうか。
保険料払込期間や加入の時期によって変わるかもしれませんが、支払う保険料が保険金額の8割程度だったとしたら、保険金500万円に対して400万円の保険料を保険金300万円であれば240万円の保険料を支払うことになります。
今後、どの程度インフレが進むかわかりませんが、経済の成長にはインフレの状態であることが望ましいことを考えると、30年先の保険金は支払った保険料に対してお得と言えるでしょうか。
どんどんお金の価値が下がるかもしれないことを考えると、長期間、保険会社にお金を預けることはもったいない気もしますよね。
将来のことに備えるのはとても大切ですが、30代、40代のうちから将来必要となるお金の価値を現在の価値に固定しないようにしましょう。