年末調整の用紙ってただでさえ身構えるのに旧制度と新制度の違いが加わって余計に難しいと思っていませんか?
- 年末調整の旧制度、新制度の計算は違うの?よくわからない
- 旧制度と新制度の両方がある場合、どうすればお得なの?
- 保険料控除の上限は12万円らしいけど、1つの契約で12万円を超えてれば、他の申告は不要なの?
など、初めての年末調整や生命保険に新たに加入した後の年末調整は「どう書けばいいんだっけ?」と悩みますよね。
また、毎年書いていても年に一回のことなので、前年に書いた内容もうろ憶えなんてこともあると思います。
保険料控除の記入について、いきなり記入していこうとすると書きづらいですし、悩んでしまいます。
ですが、ほんのちょっとの予備知識と記入前の簡単な準備でスムーズに書けるはずです。
こちらの記事も併せて参考にしてみてください。
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【はじめての保険料控除】控除申告書の書き方と保険料控除を最大限に生かす方法
生命保険等に加入し保険料を支払っている場合、支払った保険料の全部または一部を所得控除として所得金額から差し引くができ、これを生命保険控除といい、生命保険控除申請をすること税金負担を軽くすることができま ...
記入の前に保険の種類ごとに整理する
生命保険料控除の対象となる保険の種類は、全部で5種類あります。
- 一般生命保険(旧制度)
- 個人年金保険(旧制度)
- 一般生命保険(新制度)
- 個人年金保険(新制度)
- 介護医療保険(新制度)
あなたが加入している保険をこの5種類に分けてみましょう。
まずは、旧制度と新制度ですが、平成24年よりも前に契約したものが旧制度、平成24以降に契約したものが新制度となります。
また、新制度とは、新規に契約したものに限らず、平成24年以降に更新や特約中途付加、転換したものも含まれます。
次に旧制度、新制度の中でそれぞれ一般生命保険なのか個人年金保険なのか、それとも介護医療保険なのかを分けてみましょう。
ただし、介護医療保険は新制度から新しく追加されたものなので、旧制度の中に介護医療保険相当の保険が含まれる場合には、一般生命保険に分類されます。
また、個人年金保険も個人年金保険に加入していれば、必ず個人年金保険に分類されるかと言えばそうではなく、個人年金保険料税制適格特約が付加されている必要があり、付加するにも次の要件があります。
- 年金を受け取るのが、保険料を払う人本人かその配偶者であること
- 受取人が被保険者(保険の対象者)であること
- 保険料を払う期間が10年以上であること
- 年金を受け取り始める際の受取人年齢が60歳以上で、以後10年以上受け取れること
保険証書から加入しているすべての保険について、これらの情報を確認することは難しいと思いますが、保険会社より送付される控除証明書にも「新制度控除対象」または「旧制度控除対象」記載がありますので、簡単に分けることができると思います。
ただ、
という場合には、上記の分類方法・要件を確認してみてください。
控除対象額を保険種類ごとに計算して控除額を算出する
控除額の計算は、先ほど分けた保険の種類ごとで合算します。
さらに以下の条件に照らし合わせることで、それぞれの控除額(仮)が決まります。
旧契約での所得税に対する所得控除額
- 支払保険料が25,000円以下の場合
控除額 = 支払保険全額 - 支払保険料が25,001~50,000円の間の場合
控除額 = 支払保険料 × 1/2 + 12,500円 - 支払保険料が50,001~100,000円の間の場合
控除額 = 支払保険料 × 1/4 + 25,000円 - 支払保険料が100,001円以上の場合
控除額 = 一律50,000円
新契約での所得税に対する所得控除額
- 支払保険料が20,000円以下の場合
控除額 = 支払保険全額 - 支払保険料が20,001~40,000円の間の場合
控除額 = 支払保険料 × 1/2 + 10,000円 - 支払保険料が40,001~80,000円の間の場合
控除額 = 支払保険料 × 1/4 + 20,000円 - 支払保険料が80,001円以上の場合
控除額 = 一律40,000円
次に、もし一般生命保険や個人年金保険で新制度、旧制度の両方がある場合には、新制度と旧制度の控除額(仮)を合算しますが、もし、旧制度のみで40,000円を超えるのであれば、合算する必要はありません。
なぜなら、旧制度と新制度の合算額が40,000円を超える場合は、上限40,000円となるからです。
上記の手順で、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の控除額(仮)をそれぞれ算出します。
すべて算出したら、それらをさらに合算します。この額が控除額になります。
もし、最終的な控除額が12万円を超えていたら、上限12万円となります。
一点注意すべきところとして、上限12万円というのは、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の合算した場合です。
もし、一般生命保険だけで12万円に達しているからと言って、一般生命保険だけでの申請では、最大でも50,000円の控除となるので注意しましょう。
計算例
【旧契約】一般生命保険の支払保険料:14万円
【新契約】一般生命保険の支払保険料:2万4千円
【旧契約】個人年金保険の支払保険料:10万円
【新契約】介護医療保険の支払保険料:4万円
【一般生命保険料控除額(所得税)】
旧契約:14万円と10万円を超えているため一律50,000円
新契約:20,001~40,000の範囲なので
24,000 × 1/2 + 10,000 = 22,000
50,000 + 22,000 = 72,000
新+旧の場合は、控除額上限が40,000円となるため旧契約だけを申請する
控除額は50,000円
【個人年金保険料控除額(所得税)】
旧契約:10万円を超えているため一律50,000円
控除額は50,000円
【介護医療保険料控除額(所得税)】
新契約:20,001~40,000の範囲なので
40,000 × 1/2 + 10,000 = 30,000
控除額は30,000円
それぞれを合計すると13万円となるが上限額は12万円であるため、所得税に対する所得控除は12万円となる
基本的には、生命保険料控除申告書に従って記入していけば、同じ結果になりますが、「契約している保険が多く全てを記入するのが大変だ」という場合には、事前に計算して必要最低限の記入にしても良いかと思います。
もし年末調整で忘れていてもメリットがあるなら確定申告を
年末調整のときに生命保険料控除の記入を忘れていたや年末調整を提出した後に控除証明書が見つかったというように全部または一部の控除申請もれがあった場合には、下記または、税務署において確定申告で追加することができます。
年末調整の時点で上限まで申請できている場合には、メリットはありませんが、全く申請してなかったり、上限に達してなければ、メリットがあります。
確定申告には、源泉徴収票が必要になりますので、お勤めの会社から源泉徴収票が配布された際には、大切に保険しておきましょう。
詳しい説明はここでは省きますが、簡単な流れとしては、源泉徴収票の内容を入力し、追加で申請したい保険の控除証明書の内容を入力することになります。
もし、メリットがあるかどうかわからない場合には、面倒だと感じるかもしれませんが、確定申告をしておいても損はありません。
まとめ
用紙への記入前に、まずは加入している保険を整理することから始めてみましょう。
それだけでもぐんと書きやすくなるはずです。また、控除額をどのような順番でどのように計算するのかを頭の隅に少しだけでも入っていると、記入前に試しに計算してみることもできますから、記入時の不安は和らぐと思います。
最後に、記入が終わったら、コピーを取っておきましょう。
保険契約の新規加入や解約、更新がない限りほとんど記入する内容は来年以降も変わらないため、コピーを取っておくことで次回記入する際の見本として使うことができ、迷わず記入することができます。
最近では、スマートフォンのカメラでも小さな文字まで綺麗に写すことができるため、コピーではなく、スマートフォンで撮っておくという方法もおすすめです。