将来のリスクに備える手段のひとつとして、保険への加入を考えていることと思いますが、なんとなくで保険を選んだり、勧められるがまま保険に加入したり見直しをしていては、
- 保険料が高くて貯蓄できない
- 保険料が高くて余裕を持った生活ができない
- 保険料は高いけど、保障を減らすのは不安
となるのは、目に見えています。
もちろん、いつ何が起こるかわからないですから、いくら保険料が高くても保険を使ってリスクに備えた方がいいのではないかという思いもわかります。
ですが、高い保険料を支払っていても、死亡したときや入院したときなど、支払事由に該当しない限り保険金や給付金を受け取ることはできません。
もし、事故や病気で会社を長期間休まなければならなくなったとしても、入院ではなく、自宅療養である場合には、給付金を受け取ることはできません。
有給休暇が残っていなければ、給料もまともにもらえないことになります。(ただし、休職の届出をすることで、満額とは限りませんが、一定期間給料が支払われたり、傷病手当金が支給されます。)
このような場合に、貯蓄がないと生活が困窮することになり、大変ことになります。
もちろん、その間も高い保険料は支払い続けなければなりません。
安心のために加入したはずの保険によって苦しむなんて皮肉なことはなりたくありませんよね。
貯蓄をしながら必要十分な保険を選ぶことができれば、先ほどの例のように、保険ではカバーできないことも貯蓄があれば、苦しむこともありません。
上手に保険を選び、活用するためには、保険に加入する目的はなにか、どんなリスクに備えるのかなど、自身で考え、明確にすることが重要です。
なぜなら、保険のことについて、学校で学ぶこともありませんし、身近に保険のことについて詳しい話しをしてくれるのは、保険屋さんくらいです。
保険屋さんは、自社の商品をアピールし契約してもらうことが仕事ですから、保険屋さんの言うことを鵜呑みにしてしまっては、正しい情報・知識を得ることはできません。
結果、保険屋さんに勧められるがまま、なんでも保険でカバーしようと保険に加入しすぎてしまい、保険料も必要以上に高く、貯蓄もできない状況になってしまうのです。
保険への加入は、必要最低限にとどめるのが鉄則です。保険の正しい加入の考え方を使って、無駄なく保険を活用しましょう。
誰のために保険に加入するのかを考える
誰のため?と言われると「そりゃ、自分のためでしょ」となりそうですが、もう少し深く考える必要があります。
言い方を変えると、「どんなときに誰が困るのか?」です。
もちろん、自分が困るというときもあるでしょうが、家族が困るということもあると思います。
では、どんなときに誰がどのように困るのか代表的な例で考えてみましょう。
世帯主が死亡したとき
世帯主というと、あらゆる生活費(衣・食・住)を支えている一家の大黒柱であることがほとんどだと思います。
子どもがいる場合には、子どもが独立するまでの教育費もありますし、細かく見ていくと、他にも車の維持費や買い替え費、家電製品のように不定期に買い替えが必要なものもあります。
配偶者も働きに出ていたり住宅ローン(団信)があったりする場合と、そうではない場合では、お金の面での困り度は異なるかもしれませんが、残された家族にとって、もっとも影響が大きい出来事です。
家族の誰かが病気や怪我を負ったとき
まず、家族の誰であっても、病気や怪我により入院や通院といった治療費が必要になります。
特に世帯主であれば、入院もしくは、自宅療養であっても就労が難しい場合、その間の収入が減少する恐れがあります。
配偶者(専業主婦(主夫))が病気や怪我を負った場合でも、小さな子どもがいる家庭であれば、治療に専念する間は、保育園に預けるなどで保育料が発生する可能性があります。
病気や怪我などで、上記に挙げたような状態が短期的なのか長期的に続くのかによって、考えがわかれるところですが、どちらにしても生涯続くことはなく、限定された期間であることがほとんどです。
いつどのように病気や怪我をするかを予測することは難しいですが、就いている職業や趣味行動などから怪我の可能性を考えたり、身内の病歴や生活習慣から病気の可能性を考えてみることが大事です。
老後の心配
老後は、必ずくるものなのでリスクとは言えませんが、少子高齢化にともない、公的年金は徐々に下がり、反対に社会保険料は徐々に上がることが予想されます。
また、高齢になると病気になる恐れも高くなるので、普段の生活費にプラスして医療費にどれくらい必要になるかを押さえておく必要があります。
もしものときに必要な金額を算出する
あなたやあなたの家族が、どんなときにどのように困る事態になるのか想像することができたでしょうか?
では、万が一本当にそのような事態になったときにどのくらいの金額が必要になりそうなのか考えていきましょう。
ここでは、世帯主が死亡したときを例に算出してみます。
世帯主が死亡してしまうと生活費・教育費・車や家電など様々なお金の心配が必要になることがわかりましたが、実際にどのくらいの金額を考えなければならないのでしょうか。
例として、6歳の子どもがいる夫(37歳)、妻(35歳)で確認してみます。
- 生活費:26万円/月
※生活費は、衣食住にまつわる食費や住宅費、水道、光熱費の合算とします。 - 車購入費:2万8千円/月
※車購入費は、300万円の車を9年ごとに買い替えると考えた場合の月平均値
300万円 / 9 / 12 ≒ 2万8千円 - 家電購入費:8千円/月
※家電購入費は、すべての家電費を80万円として、8年ごとに買い替えると考えた場合の月平均値
80万円 / 9 / 12 ≒ 8千円 - 教育費:5万3千円/月
※教育費は、子ども一人が22歳で独立するまでの総額を1400万円としたときに残りの期間分を月平均した値
22 - 6 = 16年(子どもが独立するまでの期間)
1400万円×(16/22)= 1020万円(子どもが独立するまでに必要となる教育費)
1020万円 / 16/12 ≒ 2万8千円
となり、月に必要な金額は34万9千円、年額では418万円となります。
もし、このままの額で世帯主である夫が死亡したとすると、子どもが独立するまでの期間の金額にすると6700万円となります。
その後、子どもが独立し、生活費を半分、車購入費や教育費を0と考えても、その後35年間の生活にかかる金額は、5800万円となり、簡単に1億円を超える金額となってしまいます。
もちろん、世帯主であった夫分の生活費や車購入費などを少なく見積もるなどの調整は必要ですが、それでも1億円前後の金額になるはずです。
また、世帯主が死亡すると扶養からはずれることになりますので、さらに国民年金や国民健康保険料なども加算されることになります。
ぜひ一度、あなたのご家庭の支出について確認してみてください。
算出した金額から本当に保険が必要かを考える
必要な金額は、6700万円 + 5000万円 = 1億2500万円でした。
1億となると少々ゾッとする金額ですが、実際に保険で補う必要がある額はどれくらいになるでしょうか。
先ほどは支出額だけを計算しましたが、次は収入額を計算してみます。
職種などにも影響されますが、妻(35歳)がすぐに働きにでたとして年収250万~300万円があるとすると、65歳までの30年間で7500万~9000万円の収入となります。ここでは、ざっくりと中間の8250万円ということにしておきましょう。
これで、1億2500万円 - 8250万円 = 4250万円となり、不足分の4250万円を保険で補うということには、なりません!
実は、遺族基礎年金や遺族厚生年金といった手厚い公的制度がありますので、ぜひ活用しましょう。
遺族基礎年金
亡くなった方(ここでは世帯主)が国民年金に加入しており、保険料納付していた期間と保険料免除されていた期間の合計が被保険者期間中の2/3以上であること。
つまり、きちんと保険料を納付していることが前提となり、さらに、18歳までの子どもがいる場合に限り自営業者でもあっても受給することが可能です。
受け取れる年金額は、子どもの人数によって変わります。(平成30年4月現在)
- 子ども1人の場合:1,003,600円(年額)
- 子ども2人の場合:1,227,900円(年額)
- 子ども3人の場合:1,302,700円(年額)
※さらに子どもがいる場合には、子ども1人につき74,800円を加算
今回の例では、子どもの年齢が6歳だったので、1,012,800円 × 12年 = 1204万3200円となります。
これで、不足分は4250万円 - 1215万円 = 3046万円となります。
遺族厚生年金
こちらも国民年金加入期間中の2/3以上の間、保険料の納付または納付を免除されていることが前提条件となります。
また、厚生年金ですから、亡くなった人が、厚生年金に加入していることも条件の一つとなります。つまり、会社員や公務員でないといけないということになります。
受け取れる年金額は、次の計算式ようになります。(平成30年4月現在)
- a:平均標準報酬月額(平成15年3月以前の厚生年金被保険者期間の賞与を含まない収入を平成15年3月までの厚生年金被保険者期間の月数で割った額)
- b:平成15年3月までの被保険者期間月数
- c:平均標準報酬額(平成15年4月以後の厚生年金被保険者期間の賞与を含む収入を平成15年4月以後の厚生年金被保険者期間の月数で割った額)
- d:平成15年4月以降の被保険者期間月数
としたとき
- 国民年金と厚生年金の被保険者期間合計が300月(25年)以上の場合
( a × 0.007125 × b + c × 0.005481 × d )× 3 / 4 - 国民年金と厚生年金の被保険者期間合計が300月(25年)に満たない場合
( a × 0.007125 × b + c × 0.005481 × d )× 3 / 4 /( b + d )× 300
となります。
いまいちわかりにくいので、夫(37歳)を例にいくつかのパターンを算出してみましたので参考にしてください。
条件として、平成15年3月以前に24ヶ月間、平成15年4月以降に180ヶ月間、厚生年金被保険者だったとします。
夫(37歳)標準報酬は32万円だとした場合、年額で524,626円を受給することができます。
妻が35歳から86歳までの51年間受給したとすると、524,626円 × 51年 = 2675万5926円となり、不足分は3046万円 - 2675万円 = 371万円となりました。
中高齢寡婦加算
子どもが18歳に到達した場合、遺族基礎年金の受給がストップすることになりますが、変わりに中高齢の加算として、妻は65歳になるまでの間、年額584,500円を受け取ることができます。(平成30年4月現在)
この例では、中高齢寡婦加算の受給開始時の妻の年齢は47歳となりますので、584,500円 × 18年( 65 - 47 )= 1052万1000円となります。
これで不足分は371万円 - 1052万円 = -681万円となり、十分に公的制度でカバーできることになりました。
老齢基礎年金
さらに、65歳からは、老齢基礎年金を受給することができます。
基本的に国民年金保険料を全期間にわたり納付していれば、年額で78万円程度を受け取ることができます。(平成30年4月現在)
もし、満額の78万円を65歳から86歳まで受け取ると、78万円 × 21年 = 1638万円となります。
今回は、世帯主にもしもがあった場合でも公的制度をうまく活用することで十分に補うことができる結果となりました。
あくまで、活用例ということで必ずしもこのような結果となるわけではありませんが、あなたやあなたの家族に合わせて計算、確認することで、加入する保険は最低限にすることができ、無駄な保険料を支払わなくてもよくなりますので、一度確認してみてください。
詳しい、受給資格要件や受給の開始や終了時期については、以下をご参照ください。
まとめ
保険を選ぶ際には、どんなとき、誰のために、どのくらいの保障が必要か大切です。
また、すべてを保険で補おうとする必要はなく、優先度の高いものから、貯蓄や公的制度を活用することで、保険料を節約することができます。
今回の例では、公的制度がとても万能のような形で終わりましたが、すべてを完璧に公的制度で補えるとは限りません。
貯蓄や公的制度、民間の生命保険をうまく活用してより負担の少ない方法を選択しましょう。